チベットの民話(2)

チベット専門ゼミの授業成果として、今回はBlo bzang ‘jam dpal & Tshe ring sgrol ma (eds.), A khu ston pa. Grong khyer lha sa’i phyogs sgrig khag gsum rtsom sgrig pu’u, Grong khyer lha sa’i mang tshogs sgyu rtsal khang, 2001. 所収の笑い話を紹介します。欲深い先生を弟子が智慧でぎゃふんといわせるお話です。

先生のモモ

 

 昔、一人の先生に三人の弟子がいました。

その先生は、いつも自分が満腹になるだけの肉入りモモを七つしか作りませんでした。そのように度々作っていましたが、三人の弟子に全く与えたことがなかったので、モモを造るあるときに、一人の弟子が「今日のこのモモを先生に一つも召し上がる事がないようにして、私が奪う」と話すと、すぐに他の弟子二人が「あのケチな先生の手から奪うことができるのなら、私たち二人の家から肉やバターやお菓子、あるもの全てをあなたに渡そう」と言い、彼ら三人は賭けをしました。

 

 その日、先生の御前にお食事であるモモが捧げられると同時に、弟子が先生の御前に行き、頭をかいて舌を伸ばし、何か申し上げるようなことがあるような素振りを見せたので「何を言いたいのだ?」と先生がおっしゃると、弟子の彼は「昨日、私たちの国に豪雨が降ったために洪水で建物の壁が崩れたのですが、その下から金銀と銀貨が大きな鍋一杯ほど出てきました」と申し上げました。

 

 先生は「それで?」と言いながら、彼にモモを一つ与えました。彼はそのモモを食べ終わってから「父が『これを全部先生に差し上げたらどうか』とおっしゃいました」と話した時、先生がモモをまた一つ彼に与えてから尋ねると、弟子の彼は「母が『それでは、半分ほど先生に差し上げれば良いでしょう。先生には大きな恩があるけれど、家に少し置いておいて子供の将来のために使いましょう』と言いました」と申し上げた時、先生はまたモモを一つ彼に与えました。「その後、兄と姉は『全て母の言うとおりにしましょう』と言いました」と申し上げたので、モモを彼に全て与えました。その先生はお金がとても好きなので、弟子の彼にさらに話せとおっしゃいました。弟子の彼はモモを全て食べ終わった後、「そして、今朝の夜明けに私は目覚めました」と申し上げました。その日、先生はモモを一つも食べることはありませんでした。

澤井志保美訳)

「モモ」というのは、チベット風の餃子のことです。「頭をかいて舌を伸ばし」というのは、高貴な人に対する礼法です。

(三宅伸一郎)


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チベットの民話(2)」への1件のフィードバック

  1. tingmo

    『一休さん』に出てきそうなお話ですね。
    そういえば、『一休さん』はチベット自治区でチベット語の吹き替えが制作されて放送されていましたよね。『一休さん』がチベット人にもウケる理由がわかったような気がします!?

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