「あなたに会いたいのですが・・・」

    出発の前日ここで書いたが、わざわざ飛行機に乗っていくのが億劫だったし、健康上の不安もあった。でも本当に行ってよかった。短期間にあまりにも多くのことを経験して頭の中がまだ整理できてない。

  4日間はラカンの1970年から72年にかけての講義録を対象にした「国際ラカン協会」の夏のセミナーに参加し、その後4日間に、美術館(オルセー、ポンピドゥーセンター)に行き、ペールラシェーズ墓地を訪れ、買い物をした。その間、土日を除き、パリに行くたびに受けている精神分析家の寝椅子に横になり、分析を受けた。それから劇と映画も一本ずつ見ることができた。

  その合間をぬって5人の友人と会ってきた。直前まで行けるかどうか分からなかったので直前にメールやファックスをしたのだが、ありがたいことにみな会ってくれた。服飾デザイナーのEさんはフランス人の夫に子供を預けて会ってくれたし、バカンスに行っていて連絡のとれなかったC氏はホテルに直接連絡をくれ会いに来てくれた。またセミナーで再会した分析家のT氏はよかったら後日会おうといってくれたので、二日後に会った。みなこちら以上に忙しい中を何とか調整して会ってくれた。どうしても時間のとれない大使館につとめるW氏とは、入口で久しぶりに厳重なチェックを受け、彼のオフィスで30分だがお話できた。

  こちらが会いたいと思って会えるのは、なぜパリだと可能なのだろう。それはわざわざ遠くから来たのだからと相手が思うのだろうか? それよりもたとえばこの京都で「あなたに会いたい」と言葉に出す機会が果たしてどのくらいあるのだろうと自問してみると殆どないことに気づく。

  人が人に会うためには理由がいる。仕事なり情報の交換なり明確な目的があるか、もしくは友情なり恋愛感情なり性的欲望なりを相手に感じているかを相手に伝えないと会えない。それがそこでは、ただ気持ちをそのまま伝えるだけで会えるのだ。

    「あなたに会いたいのですが・・・」こう言うためだけでもパリに行った価値はあった。     (番場 寛)

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