チベットの民話(4)

チベット専門ゼミの授業成果として、今回もBlo bzang ‘jam dpal & Tshe ring sgrol ma (eds.), A khu ston pa. Grong khyer lha sa’i phyogs sgrig khag gsum rtsom sgrig pu’u, Grong khyer lha sa’i mang tshogs sgyu rtsal khang, 2001. 所収の笑い話を紹介します。

ヨーグルトご飯を舐める

昔、1人の先生と1人の弟子がいました。先生がどこかに行く時に弟子を怖がらせるために、ヨーグルトご飯を指さして「これを食べると死にます。あれを舐めると狂います。これを食べると病気になります。私のターラー花をダメにしたら罰を与えます」と言い、出掛けました。弟子はすぐにその戸を閉め、そのターラー花をメチャメチャにし、奥に行ってヨーグルトご飯を残らず食べて眠りにつきました。

それから、弟子の彼は先生が帰ってくる頃を見計らい、戸の後ろで泣く振りをして座っていました。先生が帰ってきて、弟子の彼に「何かあったのか」と尋ねた時、弟子の彼は泣きながら先生に「ご命令を守ることが出来ませんでした。今朝、先生がお帰りになると思い、お部屋を掃除していた時にターラー花に小鳥さんがおとまりになられまして、ネコさんと彼の2人はお遊びをしていらして花をメチャメチャにしてしまいました。先生が来られたら私をお殴られになると思い、怖さに耐えられず先生が死ぬとおっしゃった、それを食べたら死ぬと考えて食べたのですが、死にませんでした。また、狂うとおっしゃったそれを舐めたのですが、狂いませんでした。もう、お叱りを受けないくらいにはなるのではないかと考えて、病気になると言ったそれを食べても病気にはなりませんでした」と泣いて昏倒したふりをしました。先生は言葉なく「さあ、泣いているな。こっちに来なさい」と言いました。(澤井志保美 訳)

標高や気候の関係で米が育たないチベットで、それは希少なもので、ハレの日のごちそうでした。私の友人のチベット人(西チベット出身)の父母は「昔お米を食べたことなかった」と言っていたそうです。今は、中国から輸入され、希少なものでは無くなってきました。チベット人は、ネーという麦を炒めて粉にした「ツァムパ」を主食として食べます。もっとも、日本人が米をそのまま食べず焚いてご飯にするように、チベット人は、ツァムパにお茶やバター、チーズや砂糖などを混ぜ「調理」し団子を作ってこれを食べます。その団子のことを「パー」といいます。ツァムパを食べるということが、チベット人のアイデンティティーの一つとなっています。

ごちそうとしてのお米料理の一つが「ショムデー」つまりヨーグルトご飯です。炊いたご飯にヨーグルトをかけ、砂糖や「トマ」と呼ばれる甘い小さな芋を入れ、混ぜて食べます。また同じく炊いたご飯に、バターと砂糖、トマや干しぶどうなどを混ぜた「デースィー」というのもあります。

青海省の西寧にあるチベット・レストランで出て来た「デースィー」。黒いのが「トマ」

文中の「ターラー花」とは、原文の「སྒྲོལ་མ་མེ་ཏོག་(sgrol ma me tog)」をそのまま訳したものです(sgrol maが女神「ターラー」、me togが花の意)。具体的にどのような花なのかわかりません。

(三宅 伸一郎)

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