青海蔵文化博物館

西寧郊外に「青海蔵文化博物館(མཚོ་སྔོན་བོད་ཀྱི་རིག་གནས་རྟེན་མཛོད་གླིང་)」というチベット文化に関する巨大な博物館があります。蔵医院でお灸をすえられた後、青海チベット医薬研究所の研究員であるタクブムジャ氏の案内で、青海民族大学で日本語を教えている大谷大学出身の吉田環さんとともに、この博物館を見学させてもらいました。

青海蔵文化博物館(以前訪問した際に撮影したものです。外見は変わっていませんでしたが、展示品はさらに充実していました)

2006年に開館したこの博物館、実は以前にも訪問したことがあります。その時は、チベット医学の紹介がメインでしたが、今年から、チベットの生活文化や文字に関する内容が充実し、バージョンアップされていました。

いくつもの貴重な展示品がありますが、まずなにより紹介しなければならないのは、長さが618メートル、画面が1500平方メートルもあり、ギネス・ブックにも登録されているという世界最大のタンカ(掛け軸・絵画)です(これは、以前訪問した時から展示されていました)。その内容は、『カーラチャクラ・タントラ』や『倶舎論』に説かれる世界生成の物語にはじまり、チベットの歴史やポン教・仏教各宗派の歴代高僧侶や神がみ、マンダラ、さらには民話の登場人物にいたるまで多岐にわたり、まさにチベット・イコノグラフィーの百科事典とでもいうべきものです。じっくり観てゆくと、まる一日はかかるのではないかと思うほど長大です。うねうねとまがりくねった通路に沿って展示されているので、チベット・イコノグラフィーの世界に迷い込むこと間違いなしです。

チベット医学の根本聖典『ギューシ(四部医典)』の巨大な写本(伝統技術を用い近年新たに作成されたもの)や、古文献、さまざまな書体の見本、絨毯、皮で作られたお椀や各地域の民族衣装など、どれも興味深いものばかりでした。

そんな中でも、個人的に最も興味を引かれたのが、馬具・甲冑・武器などの展示でした。比較的大きな部屋一室全体が、それらの展示に充てられていました。中央には甲冑を着けた騎馬武者像が展示してありました。

チベットの英雄叙事詩「ケサル王物語」を読んでいてなかなかイメージがつかみにくいものの一つが、馬具・甲冑・武器です。ここには、多種多様な馬具・甲冑・武器が一同に展示されており、それらをじっくり観察することによって、物語での描写を細部までイメージすることが容易になります。実物の持つ力は大きなものです。

2006年にニューヨークのメトロポリタン美術館で「Warriors of the Himalayas: Rediscovering the Arms and Armor of Tibet」という博覧会がおこなわれ、その図録が出版されていおり、2008年夏に同美術館を訪問した際には、小規模ながらチベットの甲冑がいくつか展示されていました。ただ、常設のようではありませんでした。常設でこれだけの規模の展示がおこなわれているという意味で、極めて貴重な場であると思います。

残念ながら、博物館の展示品全体に対するカタログや図録はありませんでした。チベット文化の未来のためにも、ぜひ作成してほしいと思いました。

(三宅 伸一郎)

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