日別アーカイブ: 2012年01月07日

痛い正月―病床30センチ―

 皆様、あけましておめでとうございます。卒論提出のため追い込みに必死の4年生の皆様も、もう一回おめでとうと言えるように頑張ってください。

「あったかい」と感じるために厳しい寒さの故郷へ帰ったはずなのに、年末にどうしたわけか、と言っても酒に酔い炬燵で変な姿勢のまま寝入ってしまったことくらいしか原因が思い当たらないが、腰を痛めてしまい今日までずっと布団に寝たままの生活を強いられている。心の痛みには耐えられないと思うことがたびたびあるが、自分がこれほど肉体的な痛みにも弱いのかと思い知らされている。母が施設に帰り、妹も嫁ぎ先に帰った今、まるで一人で救助者を待つ遭難者のように医者からもらった薬を服用しながらひたすら回復を待っている。

立つことがまったくできないわけではなく、ちょうど4分ほどは立って動けるのだが、それを過ぎると痛みに耐えられなくなり、布団に横になる。それを繰り返すことでどうにか一人でも生きていられるのだが、それはちょうど怪獣と戦っている最中に胸の赤ランプが点滅し、3分後にはエネルギー補給のために太陽の光を浴びに空に飛び立っていた初代ウルトラマンのようだとも思ったが、顔を歪めて布団の上に横になる姿は無様で誰にも見られたくない。

次第に食料も少なくなり、このまま動けなければ本当に実家で遭難という、昨年話題に上った「無縁社会」における「孤独死」を経験することになるのだなあと思っていた。もちろんそんなことはなく、まだ寝付くまえに参加した町(村といったほうがいいだろうが)の新年会では一年に一度しか会わない方がほとんどなのに、みな温かく迎えてもらい、助けを求めれば助けてくれるのはわかっているが、それを求めにくい心理もいま身を以て経験している。実際にそれができず都会でなくなっていく人が多いことも今は分かる気がする。

もうすぐ授業が始まるので何が何でも京都に戻れるまでには治さなくてはと思い、痛さに悲鳴を上げながら、車に乗り、整骨院に行って治療をしてもらった。
直後はあまり変わってないような気がしたが、おかげでこうやって休みながらパソコンに向かうことができた。

雪が降るが、幸い、極端に降り続くことはない。厳しい寒さの中思う。やはりこちらの人は「あったかい」と。腰を痛める前に用があって農協や役所に行ったのだが、ゆったりとした時間が流れていて、対応が本当に丁寧だ。

これは「人があったかい」のではなく、時間と人員配置にゆとりのあるシステムのせいだと自分に言い聞かせているのだが、パリから京都に帰ったときにいつも感じる感覚と似ている。

寝ころんだまま腕だけを動かす、床上(とこうえ)30センチ以内の生活を続けていると昨年年甲斐もなくダンスを踊ったことはもちろんのこと、普通に歩けることさえもう二度とできないような気がしてくる。今は痛さに顔を歪めながら教室で学生たちの間を歩く自分の姿を夢見ている。(2012年1月7日。番場 寛)