片貝の花火を見て思ったこと(アナログなものがデジタルなものから救ってくれる)

 フランスから帰ったばかりだったのだが、映画「この空の花」を見ていたせいだろうか、9日に故郷に帰り、新潟県小千谷市片貝の祭の花火を観てきた。例年観覧のための桟敷席を予約している中学校時代の友人に相談したところ、偶然空きが出たということで、その仲間に入れてもらった。

普段はのどかな田園風景が広がる田んぼがその2日間ばかりは一変する。花火打ち上げから半径10キロか20キロか知れないが、目に映る道路の片側は午後2時過ぎくらいから車で埋まり始め、暗くなるころには駐車禁止の標識が置いてあるところまでびっしりと埋まる。新潟ナンバーや福島ナンバーの車も止まっている。

神社の参道を両脇の夜店に群がる客をよけながら進んでいく。お好み焼き、焼きそば、イカ焼き…等の食べ物やに驚くほどの人が列をなしている。おもちゃの光物がLEDの光になっているのは驚かなくても、一番驚いたのは「金魚すくい」である。小さな子どもが手に網をもっていたが、水槽の水は回っているものの、金魚はプラスチックだった。ついにここまで来てしまったか、次は電子ゲームの金魚すくいになってしまうのだろうかと思ったが、これでは「すくい」がないではないか?

開始前に桟敷席の会場に着くことができた。数年前にも同じ場所で鑑賞したことがあるが、そのときよりさらに山を切り開いたのであろうか、観覧席が広くなっていた。花火が数年前に観た時より少し山よりに遠くなっているので尋ねたら、観客の頭上に花火の殻が落下するという事故があってから遠ざけられたということであった。

その花火大会が好きなのは、花火の番付というものが作られ、花火を奉納した人の花火に託す願いが、発射前にアナウンスされるからだ。「…中学…年卒業生一同。還暦を祝って…」「祖父…の…周忌を記念して。天国のおじいちゃん、みんな元気です…」ひとつひとつの花火に「物語」がつけられるのだ。観ている友人たちと自分たちも来年上げようかという話も持ち上がったが、ぼくは、今は亡き祖父が自分が生まれた時記念して小さな花火を奉納したと聞かされた話を思い出していた。

ボッと音がし、ひゅるひゅるとあがり、頂点に達したと思う瞬間に花開き、遅れて体の奥まで響く音が大地までも震わせる。9時半に3尺玉、10時に4尺玉が打ち上げられた。規模は大きいのかもしれない長岡市の花火大会では3尺玉までで、4尺玉は世界一だそうで、なぜなのかと思ったら、友人の息子が教えてくれた。4尺玉をあげるには半径800メートルの空き地が必要で、長岡では無理なのだそうだ。

花火は色もさまざまな色のものが打ち上げられるのだが、感心したというか、どうして作るのだろうと思ったのは、下から観ていると人の目のように楕円形で、中に円で開く花火だ。

そうした花火を観客は「うわー」「ああ綺麗」とただ感嘆するばかりだ。思い出すのはほんの数日前にびわこホールで観たCHROMAの高谷史朗のコンピューターグラフィックとサイモン・フィッシャー・ターナーの音楽である。思えばあの作品のテーマは「色彩」であった。スクリーンと舞台上に映し出される映像と流れる音楽はえも言えない美しさであったが、なぜか息苦しくもあり、舞台上での生身の人間のダンスや演技があることでその息苦しさは救われていたように感じた。

花火もまさに色彩と音で成り立っているが、人はそれを観ていて、主題は何なのかなどと考えることはない。CHROMAのアフタートークで、「こういう素晴らしいものを観た時は、ああいいものを観たと言ってそのままかえるのが一番いいんですよね」と自分で言っておきながら、その作品の背景には、晩年エイズで視力を失ったデレク・ジャーマンへのオマージュもあるのだと教えてくれた浅田彰の解説を聞かなかったとしても、舞台上のパフォーマンスを観たものはそのテーマというものを考えざるをえない。

プラスチックの金魚やコンピューターグラフィックのデジタルな映像から人を救うのは言葉による物語であり、夜風、観客同士の共感、歓声、その他の身体性などアナログなものであろう。高谷もそれがわかっているからこそ舞台上の箱庭で火をつける場面とスクリーンに映し出されれる風景を連続させる演出をしたのだと思う。そしてスクリーンと「いま、ここで」というリアルな感じを繋げる演出はその前に観た「弱法師」で筒井潤が試みた方法、つまりスクリーンに映し出された俳優の語りを舞台上で同じ俳優が続けるという方法にもつながっていると思う。(2012年9月16日。番場 寛)

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