モン・サンミシェルで観たもの― 引き潮時の砂の上の散歩と葬儀の部屋の破壊されたピエタ像 ―

今回のフランス文化研修旅行に参加した学生の感想を聞くと、アルザス地方の美しい村や街並みとならんで、モン・サンミシェルを挙げる学生が多かった。

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学生たちがもっとも喜んだのは、普段は海水で覆われている島の周りが引き潮時に露呈したときその砂面を専門のガイドについて歩いたときだ。

潮が引いても砂と海水が混じって流れているところがあり、止まったままだと脚から沈んでいくことを実際に体験し、みなきゃっきゃっと歓声を上げていた。

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しかしぼくにとって良かったのは、少したどたどしいが、明確な日本語で、ユーモアも交えたフランス人のガイドの説明であった。一つ一つの建物や部屋の説明が初めて分かった気がした。

その中でも最も強い印象を受けた部屋で観たものについて説明しよう。それはそこで亡くなった僧のための葬儀の部屋だった。

部屋の隅にΑ(アルファ)とΩ(オメガ)というギリシア文字が記されている。これは人の一生における「始め」と「終わり」を示しているのだという。

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そこの壁にマリアに抱かれた十字架から降ろされ息絶えたイエスの「ピエタ」の像があるが、イエスの顔は無くなっている。古い時代の遺跡だし、と最初見た時は何も疑問に思わなかったが、ガイドによればそれはフランス革命のときに王侯貴族とともに権力側の利益をむさぼったカトリックに対し破壊を企てる革命政府側の兵士によって壊されたのだという。

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他の部屋に納められていた僧たちによる苦労の結晶である写本の多くも失われたのだという。「ピエタ」についてはこのブログでも「嘆きのピエタ」という韓国映画について触れたときに紹介したが、おそらく幼いころから教えを受けて育った人間がそれを見て破壊しようという気になるとはとうてい思えないが、それほど当時のカトリックに対する反感が強かったのだろう。

聞けばモン・サンミシェルができた当時は、いま観光客が歩いてもそれなりに疲れる斜面を、膝まづきながら登って行ったのだという。そうした熱狂的な信仰も、結果的に多くの人をギロチンに送ったフランス革命も、ともに人間の心の本性なのだ。信仰が消えたときに頭を破壊されたイエスの像の中が空洞であったという事実は象徴的であるように思えた。

アルザスから始まり、フランスの地図の北半分を横断したすさまじい行程の素晴らしく盛りだくさんの今回の研修旅行でぼくにとって最も印象に残った光景はこの部屋でみたΑ(アルファ)でありΩ(オメガ)であった。(2013年9月10日。番場 寛)

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