「OO妻」(日本テレビ、水曜)は「鶴の恩返し」なのだろうか―第一回のみを観て妄想が膨らむ―

NHKの朝ドラマは「マッサン」は俳優は良いのにもう展開が見えてしまって、見続けることができない。 国産ウイスキー第一号が完成するまで失敗し続けるのを毎朝見ることになるからだ。他にも自分にとって面白いドラマはないと思っていた。

そんなとき、フランス人との交流会から帰って偶然つけたテレビのドラマに惹きつけられた。30分くらいしか観ることはできなかったが、最近自分の経験したことと相まってたちまち感情移入してしまった。

正義感にあふれたニュースキャスターの主人公、久保田正純(正しく純粋であるという、そのままの名前だ)の妻ひかり(これも前作の「家政婦のミタ」の名前、「あかり」を引き継いでいる)はこの世に存在しないほどの理想の妻だが、二人は結婚してはいず、3年ごとの契約を結んだ上で一緒に生活している。

つねに夫を助けるだけでなく、正純の父親が入院してしまったことで軽い認知症のようになった母親の面倒をみるのを兄妹間でおしつけ会っているのを見た、ひかりは、土下座してその母親の面倒を見たいと頼むほどの優しさも持っている。

「言葉によって現実を変えられるし、そうすべきだ」と素朴に信じている夫、正純を、殆ど従順だが、自分の強い意志をもって支えている。第一回では正純が自分の番組に出演を頼んでも拒絶していた作家を、粘り強く追跡することで彼の弱みとなる写真を撮ることで、彼を脅し、番組に出させることに成功するが、正純が正式に結婚し、子供を持ちたいと申し出ると3年前の契約書を守るよう頼むばかりだ。

「なぜ子どもを産むことができないのだ」と夫が迫った時、いつも穏やかで微笑みを浮かべていたひかりの口元がわずかに動き、その理由を述べようとするがそれはできないと自分を抑える場面に胸を打たれた。夫を愛していることは間違いないのだが、あまりにも多くの語ってはいけないことがあることを、無言の微笑みだけで表現するひかり役の芝崎コウの演技というか演出は本当にすばらしい。このドラマはニュースキャスターを主人公に据えたことでも分かるように、「言葉にできること」と「言葉で表しえないこと」との対立で成り立つドラマだと思う。

では、なぜ子どもを産むことを拒否しているのだろうかと考えたとき、ふと頭に浮かんだのはまったくの妄想だが、ひかりは「鶴の恩返し」の鶴ではないだろうかということだ。

いくつも異なった筋書きのあるこの昔話のあるものは、鶴は助けてもらった男と結婚し、毎晩機を織るがその姿を決して見てはいけないと夫に言う。しかし童話や昔話の定石通り、「禁止」は破られ、「罰」として鶴は夫のもとから飛び立っていく。鶴は自分の体の一部である羽をむしりとりそれで機を織っていたのだった。

ひょっとして、ひかりは正純にかつて助けられた動物か、飼われていたペットの分身なのではないか? そう思うと、正純が会社で新しくアシスタントとして紹介された風谷愛という若い女性が、「覚えていらっしゃらないでしょうが、前にお会いしたことがあります」というのも、別の動物かペットの生まれ変わりかと思いたくなってしまう。

契約という結びつき耐えられなくなり、激怒した夫のもとをひかりが去るところで今回は終わっているが何にぼくは感動したのだろう?

それは愛する相手が求めていることを語ることができず、自分の胸に秘めておかなくてはいけない苦しさだ。ちょうどこの番組を見た日、フランス人に、11日にパリで行われたレピュブリック広場での二百万人も大行進に対する見方についてある日本人の指摘を伝えようとするのだが、うまく表現できないもどかしさ、悔しさを感じた日にこのドラマを観たせいかもしれない。 それはひかりのように何かを禁じられていたのではなく、単にぼくのフランス語の力の不十分さによるものだったが、想いを伝えられない辛さという点では共通しているだろう。

ところで今年提出されたぼくのゼミのクラスの卒業論文の中に「フランスと日本の結婚から見た結婚の本質」というものがある、これは、正式な「結婚」以外にも、同棲や事実婚やパクス(民事連帯契約)などさまざまなカップルの形態があり、昨年同性同士の結婚も認められたフランスと日本の結婚を比較し、結婚の本質に迫ろうとするものだ。

これほど多様な形態があり、制度的、経済的にも正式な結婚と殆ど同じ保障が受けられるフランスにおいてなぜ結婚がなくならないと思うのかという僕の質問に対する彼女の答えはとてもシンプルなもので、「なぜなら結婚はあらゆる結びつきの中で最も強い結びつきだからです」というものだった。

「OO妻」もパクスも「契約」で結ばれているという点で弱い結びつきだとしたなら、「結婚」という結びつきの強さにすがるカップルの結びつきもひょっとしてそれほど強いものではないのかもしれないと思ってしまう。

このドラマが「鶴の恩返し」と同じように進行するかどうかは別にして久しぶりに面白いドラマが始まったことを喜びたい。(2015年1月15日。番場 寛)

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