シニフィアンと「物語」を求めての旅、その1(鳥取篇)

もう一月ほどこのブログを書けない状態が続いている。いろいろな仕事が同時に訪れ、忙しいのだが、書けないのはそうではない、あまりに経験したことが多すぎてどれをどのように整理してよいか分からないのだ。それで混乱している一部をそのまま書いてみよう。

9月の26日に鳥取の三徳山にある「投入堂」と言われている断崖の途中のくぼみに誰かが投げ入れたように建てられているお堂を見るために合計1時間30分ほどの登山をした。

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苦しいだけでなく、足を踏み外せば即転落死してしまうという箇所もいくつかある、部分的にロッククライミングに似たコースを知り合いに止められるのも聞かず実行した。この機会を逃したらこれから先チャンスがあるかどうか分からないと思ったからだ。

翌日は鹿野町の「鳥の劇場」でサンプルという劇団の、夏目漱石の『それから』を下敷きにした兄弟と兄嫁の三角関係をテーマにした『離陸』という劇を観た。

期待を裏切らない緊張感に溢れた優れた舞台だったが、それ以上に今強く記憶に残っているのは、その夜、その演劇祭の打ち上げパーティーまでの時間、近くのレストランで過ごした時のことだ。

日本酒を飲みながら軽い食事をしていたら若者が二人入ってきて日本酒を頼んだのだが、そのとき店の入り口の戸を開けていいかと尋ねた。

「こうして酒を飲みたかったんです」と一人が言って見上げた空を見るとちょうど完璧に丸い月が輝いていた。その日は十五夜だった。さらに驚いたのは、かれらはサンプルのスタッフだったことだ。過去にぼくが観たその劇団の素晴らしい作品についての話で盛り上がったのは言うまでもない。

しかしもっと驚いたのは、時間的にはそれよりも前になるのだが、ボランティアスタッフに鹿野町を案内してもらうツアーに参加したときのことだ。劇場の横で、その城跡についての説明を聞いていたときだ。 堀の側に設置されている案内板を観ていたら、城が残っていた頃の地図が案内板に描かれていた。

驚いたことに、そこにはそこにかつてあった城が「王舎城」と記されていた。「王舎城」とは今指導している大学院の学生の修士論文で扱う実在した中心人物、阿闍世王が住んでいた城の名だ。

城主が極めて敬虔な仏教徒でその城をインドに模して命名したということである。さらに、昔は鹿が住んでいた野だがら鹿野町と名づけられたのだろうと普通想像してしまうが、事実はそうではなく、やはり熱心な仏教徒であったその領主が、仏教語のあるサンスクリット語に漢字を充てて「鹿野」と名づけたのだという。〔仏教学の先生方どなたかどういう意味の言葉か教えてください〕。

翌日は、京都ではダンサーとして活躍していたが、一年ほど前急に鳥取の浦安という町に移り住んだOさんに会いに行った。

彼女が浦安の役場の職員としていろいろな生活をしている様子をSNSで見る度に想像力をかき立てられていた。中でも一番すごいと思ったのは、近所の人からもらったイノシシの中身を取った毛皮を、自分で使おうと思って海で洗っていたら強い波にさらわれてしまったという話だ。

彼女の住んでいる所を観たいという気持ち決定的にしたのはその隣り駅である「琴浦」という地名である。ネットの観光案内に、その浜を歩くと琴の音色に似た音が聞こえたことからそう呼ばれたと書かれているのを見た時、たまらなくその海岸に行きたくなった。

Oさんに連れて行ってもらった海岸は想像していたものとは異なり、砂浜ではなく大きな丸い石で覆われていた。歩いてみたがどう聞いても琴の音色には聞こえなかった。それでも今の僕の頭には「コトウラ」という美しい響きが残っている。

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シニフィアンの不思議さというか漢字の不思議さをもっとも感じたのは、その前日のことだ。

京都から鳥取に行く人が利用している特急の名前は「スーパーはくと」なのだが、その名は、白兎という地名から来ており、その地名は幼い頃から祖母に聞かされて育った「因幡の白兎」の伝説に基づいてつけられた地名であり、その話に出てくる岩があれだと現地に行って教えられたことだ。

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時刻表で何気なく目にしていた「はくと」が「白兎」だったことを現地にいって初めて知った「旅」だった。(2015年10月25日。番場 寛)

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