タデウシュ・カントルの劇団にいたリュトゥカ・リーバさんのワークショップに参加して(池袋、東京芸術劇場にて)

12月21日に本学で行われた公開講演会「カントルと能」にいらしてくださった皆様、また準備をお手伝いしてくださった多くの方々、本当にありがとうございました。

また何よりも、講演と公演をしてくださった河村晴久先生と謡ってくださった樹下千慧さんにお礼申し上げます。

そこでの自分の発表(「タデウシュ・カントルの劇作品における『死の表象』と『反復』」)を控えて、準備がなかなか終わらない中、12月18日から3日間のリーバさんのワークショップ( 、東京芸術劇場)に参加した。少しでもカントルの作劇術を理解するヒントを得たい。それを発表にも生かせたらといういわば泥縄式の参加でもあった。

申し込んだのは昼の部で、11時から15時までの4時間に自分が耐えられるか心配だった。数年前にヤン・ファーブルの劇団員のワークショップを受けたことがあるが、30分のウォーミングアップがきつくて音を上げたことを覚えていたからだ。

一日目はカントルの劇とそれらの特徴の説明と自分が1879年の『ヴィエロポーレ・ヴィエロポーレ』の時に初めて劇団に加わったときのことを説明された。

カントルの演劇の特徴を「あらゆることにNoと言う演劇だ」とまとめた。それは反記述的であり、反生産的であり、反消費的なものであり、芸術として自由な自立した演劇である。現実を反映するものではなく現実に応答(反応)するものだ。従来の文学的な劇ではなく、心理的な劇でもない。

そうしたカントルの劇においては、俳優は一つの要素であるにすぎず、オブジェと対等の関係にある。従ってカントルの劇の俳優においてはメソッドもテクニックもなく演劇的実践のみがある。カントルは「俳優のための小道具」という呼び名はせずただ「モノ」と呼んでいた。

従ってメインはオブジェであり、俳優ではないので心理学的な演技はしないことと、舞台は厳密にリアルであり、そこにないものはないので、パントマイムはやめること。モノに集中して、モノの存在感を最大限に出すよう努めるようにすること。
こうした指示のもとにその後すぐに実際の「演技?」に移った。あらかじめ置いてあった品物から一人ずつ選び、何もないフロアに置いてくるというものだ。モノの使い方に品物を全く知らないか、あらかじめ知っているものとして扱うかのどちらかを選択するよう言われる。ぼくは、最初は小さな枠だけの物を手に取り、転がしたり、枠の中に手を入れ外にあるものをつかもうとしたりした。

次に今度は順に品物を置いていき、空間が緊張に満ちたダイナミックなものになるようにという指示がだされる。ぼくは最初椅子を逆さにして前の人が置いた台車の上に置こうとしてうまくいかず、譜面台にもたれかからせるように置いた。

いずれも言葉は使わない動作だが、全員に強調したことは、俳優が何のためにそれをしているかその「動機」が観客に分かるように演技しなくてはならないということだ。観客はそのきっかけが分かってこそそれに続く不思議なものが分かるのだ。そしてリーバはそのオブジェの使い方として彼女が最もすぐれたものとしてチャップリンの『独裁者』で彼が地球儀をもてあそぶシーンを挙げ、それを全員に見せてくれた。

2日目になってもモノ同士に緊張感が感じられ空間がダイナミックなものになるようにという指示は繰り返された。俳優が自分で「物語」を作ろうとしなくても、それを見た観客の頭の中に「物語」はできる。人間の脳はそうできているという指摘には本当にそうだと思った。どんなに抽象的な動きで構築されたコンテンポラリーダンスを観ていてもそこに何らかの「物語」を想像してしまうからだ。

作業は相変わらず言葉は使用しないまま複雑になっていき、音楽が入り、次には俳優が衣装を着てオブジェと並んだり、俳優だけがオブジェとなり空間を構築したりしていく。

最終日の20には、衣装だけだったり、靴だけだったりで、空間を全員で造っていき、最後は人とオブジェが緊張感を保ったtableau vivant(生きた絵)というものを構築する。

最終段階の作業は、めいめいが一つの台詞だけを繰り返しながら他人との関係を時間的に構築するというものだ。そしてその最後には音楽に合わせてその関係を構築しながらダンスをするというもので終わった。

午前のクラス4時間、5時からのクラス4時間を精力的にこなすリーバさんと通訳の熱意には本当に胸を打たれた。研究発表を控えていたので個人的ないくつかの質問にも丁寧に答えていただいた。今はフランスに住んで演劇の指導をしているという彼女とフランス語で話せてとても嬉しかった。『私は二度とここには戻らない』で女中の役を演じていた女性と話せたことは今思い出しても夢の中の出来事のようだった。(2015年12月26日。番場 寛)

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