カテゴリー別アーカイブ: チベット

躍動するラルン五明仏学院

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突然ですが、これが何の写真かわかりますか?ブロック?何かの模様?いえいえ、こちらは山の斜面に建てられた、膨大な数の僧坊です。

先日大谷大学を訪問された、ケンポ・ツルティム・ロドゥー師が副学長を務められる、ラルン五明仏学院では、チベット人及び漢族が生活しながら仏教の勉強に励んでいます。

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ケンポ・ジグメ・プンツォク(1933-2004)

ラルン五明仏学院は、ケンポ・ジグメ・プンツォクによって、1980年に開山されました。ラルン五明仏学院での履修科目は、顕教、密教、一般教養の3部で構成されています。顕教では、律、論理学、アビダルマ倶舎論、中観、唯識などが学ばれます。密教では、様々な前行、生起次第、究竟次第、ゾクチェンを主な科目とします。また、一般教養では言語学、医学、チベット語などが学ばれています。ケンポ・ジグメ・プンツォ師はカリスマ的な存在で、彼を慕って方々から集まった人たちが、自分たちが住んで勉強するための小屋を建てて、お寺は徐々に膨張していきました。

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お寺というか、すでに一つの街のようですね。1999年に「世界でもっとも影響力のある、チベット仏教を学ぶことのできる大きなセンターの1つ」として、ニューヨーク・タイムズ誌で紹介されました。海抜4000メートルと、標高が高く、物資や水にも恵まれない厳しい環境にも関わらず、多くの人々が仏教の教えを求めて集まっているんですね。私もいつか訪れてみたいです。

(1月25日:渡邊温子)

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ケンポ・ツルティム・ロドゥ師

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現在チベット仏教を背負って立つ方の一人である、ケンポ・ツルティム・ロドゥ師が1月23日に大谷大学を訪問されました。師は、中国四川省、チベットの区分でいくとカム地方のセルタにあるラルン五明仏学院の副学長です。チベットや中国はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパ、マレーシアや香港、台湾など多くの国を飛び回って講演をされています。今回は初来日ということで、関東の東京大学や大正大学で講演会を行われてから、関西に来られました。

大谷大学では、仏教学科のローズ先生の学生さんたちや国際文化学科の学生さんたちと交流されました。ケンポが仏教をわかりやすく説明されていましたので、以下講演の和訳を載せたいと思います。

「仏教は智慧慈悲にまとめられます。上座部や大乗仏教など、仏教にもたくさん種類がありますが、まとめるならばこの2つに集約されます。

実践の面からは、戒・定・慧の三学に分けられます。

1番目は戒律です。生き物を害さないことが戒律の根本です。区分すれば、生き物の身体を害さないことや、心を害さないことなど、いろいろな種類があります。戒律は出家者だけのものではありません。在家者の戒律と出家者の戒律とがあります。出家者であろうとなかろうと、仏教徒である以上は他の生き物を害してはいけません。

2番目は禅定です。これは瞑想のことです。瞑想をしなければ、心にある煩悩を断じることはできません。今の我々の心は、例えるならば泥水のようなものです。土や石がまじった泥水でも、そのまま置いておけば徐々に清まっていきますね。それと同様に私たちの心も瞑想することで、徐々に清まっていきます。そのための方便が禅定や瞑想なのです。我々の身体については、チベット医学や中国医学で、昔から分析されよく理解されています。新しい世紀になって西洋医学も入ってきて、身体について更に研究が進んでいます。しかし、心についてはわかっていません。心をどのように発展させればいいか知りえませんでした。それを知らない理由は、社会の中に多くの問題があるからです。それを解決する方法が瞑想です。仏教ほどよい瞑想は世界中で他にありません。

3番目は智慧です。智慧とは、ありようをはっきりと理解することです。新しい世紀になり、色々な物質について理解が深まりました。しかし、生命の神秘についてはわかりませんでした。心の神秘についてもわかっていません。生命の神秘、心の神秘を理解できるのが智慧です。

そのように仏教の実践は戒律、禅定、智慧の3つに集約されます。

勉強に関しては、3つの言葉があります。

1つ目は聞(もん)です。まずは、仏教を勉強して聞くことが必要です。日本では仏教の大学はたくさんあると思います。それは正法を聞く最高の条件です。しかし、先生がよく学習し、特に実践しなければ、仏教を伝えることは難しいでしょう。学生であっても、卒業した後、他の場に移って実習する必要があります。そのように先生たちも実践する必要があります。先生が教え、生徒が聞くというのが第一です。

2つ目は思(し)です。思とは、仏教について色々考えて色々な方法をとることです。他の宗教では、「考えずにとにかく信仰するように」と説かれます。仏教では、「何も知らないのに信仰してはいけない。色々考えて、分析した後に信仰せよ」と説かれます。何度も何度も考えることが重要です。食事の場合でも、「自分の栄養になるのか」「利益があるのか」「病気になるのか」などと考えます。宗教も勉強して心のなかに宗教の見解をおけば、将来利益があるのか、害があるのかと色々考える必要があります。

3つ目は修(しゅう)です。修とは実践のことです。大学であれ、寺院の中であれたくさんのことを学習します。説こうと思えばいくらでも説くことができます。しかし、実践しなければ、生活の中で生かすことができません。心の中の苦しみもどんどん増えていきます。世界中で将来問題が増えていくでしょう。世界中が問題で溢れ、個々人の生活も問題で溢れていきます。生活の中で問題があるのは、心の中に不快なことがたくさんあるからです。問題をなくし、心の中の不快なことをなくすためには、今までいい方法が得られていませんでした。しかし、瞑想が心に利益があるということは、西洋の人たちも気づいています。ですから、西洋の中でも瞑想をする人が増えてきています。しかし彼らが行なっている瞑想とは、簡単なものであり、深いものではありません。一時的な利益はありますが、恒常的に苦しみを取り除くものではありません。

我々は瞑想することによって、心を益することができます。瞑想とは、ラマや僧侶たちだけのものではありません。全ての人が瞑想をすべきです。例えば、我々は運動しなければ病気になってしまいます。心も訓練しなければ、心が病気になってしまいます。心の平安とは僧侶だけでなく、全ての人に必要です。ですので、瞑想はとても大切です。

以上、8つの言葉から説明しました。

仏教は慈悲智慧の2つにわけられます。また実践の点から戒・定・慧の3つに分けられます。そして、学習の点から聞・思・修の3つに分けられます。その8つ以外にはありません」

(文責:渡邊温子)

 

栄養をとってインフルエンザ予防!

巷ではインフルエンザが大流行ですね。来週からテスト期間も始まりますので、みんなさん体調管理には十分気をつけましょう。

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チベット語bのクラスでは、授業の打ち上げを兼ねて、学食の「昔話カレー」を食べてきました。チベットと、あまり関係ありませんが(笑)。昔話に出てくる山のようにこんもりと盛られたご飯に、カレールーがなみなみとかけてあります。スプーンも超特大!5人で2皿を完食して、みんなお腹いっぱいになりました。

学食では定期試験応援フェアとして1月20日から31日まで、100円で朝定食が食べれます。和食と洋食が選べる上に、ご飯、味噌汁、スープはおかわり自由!みなさん、ぜひ活用してください。栄養をとって、テストを乗り切りましょう!

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(1月20日:渡邊温子)

あけましておめでとうございます

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みなさん、お正月は実家でゆっくりできましたか?美味しいご飯を食べ過ぎて、胃の調子がおかしくなったりしてませんか?1月7日は人日の節句でした。この日は七草がゆをいただいて、一年の無病息災を祈るとともに、お正月にごちそうを食べて弱った胃をいたわります。

ちなみに、チベットにはお米ではなくツァンパ(大麦の粉)で作ったお粥のような食べ物があります。地域によって名前も作り方も違いますが、私が夏に調査に行った、インド北部に位置するチベット文化圏のザンスカールでは、「トゥキャン」と呼んでいました。まず、ヤクの干し肉、乾燥チーズを圧力鍋にかけてやわらかく煮ます。そこに塩とバターを入れ、だまにならないようにツァンパを少しずつ加えてかき混ぜて出来上がりです。

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こちらも胃に良さそう。私もよく朝ごはんで食べていました。

4回生の皆さんは卒論提出で忙しい時期ですね。体調管理をしっかりして、がんばってください!(1月10日:渡邊温子)

チベット映画上映会

イベントのお知らせです!

『河』ポスター

国際文化学科主催のチベット映画上映会として、ソンタルジャ監督作品『河』を上映いたします。

日時 7月13日(水)午後4時30分~

映画上映:午後4時30分~6時

解説・監督へのインタビュー映像:午後6時~

場所:響流館3F メディアホール

チベット牧畜民家族親子3世代のすれ違う切ない思いを、6歳の少女ヤンチェン・ラモの目を通して描いた作品です。「親子の確執」「死」といった重いテーマを取り上げてはいますが、主人公ヤンチェン・ラモの可愛らしい表情やユーモラスな会話が散りばめられていて、涙あり笑いありの作品となっています。

1カットごとの構図が丁寧に考えられていて、登場人物の心が映像で伝わってくる芸術性の高いものになっています。

チベットの生活習慣を垣間見ることもできますし、広く現代アジア映像文化の最先端を知るいい機会になると思いますので、ぜひご観賞ください。(7月5日:渡邊温子)

端午の節句

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この写真を見て、すぐに香包(匂い袋)と答えたあなた、かなりの中国通です!(笑)

5月5日端午の節句ですが、中国では旧暦でおこなわれるため、2016年は6月9日が端午节(端午の節句)でした。このお祭りはもともと、中国楚代の政治家が人望を集めていたにも関わらず失脚して川に身を投げたため、民衆がちまきを川に投げ込んで、魚がその遺体を食べるのを止めようとしたのが始まりだそうです。

なのでこの時期、中国では粽子(ちまき)を食べたり、龍の形をしたボートで競争して川の水をばしゃばしゃ攪拌したりします。

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中国のちまきは種類が豊富!棗(なつめ)をいれた甘いものから肉を入れたものまで様々です。李青先生も、毎年笹の葉を買って、お手製の粽子を作られるそうです!その他、菖蒲や上の写真のような匂い袋をかけて邪気を払います。

一方、韓国・朝鮮ではで端午の節句は단오(タノ)と言います。喜多先生に聞いてみたところ、その日は菖蒲をつけた水で行水したり、髪の毛にまいたりするそうです。で、それが済んだら今度は、みんなでおでかけ!なぜかというと、外出は口実がないとできないし、特に女性は普段気軽に外出できなかったので、端午の節句は一つのいい口実だったようです。それも女の人たちはブランコをして遊んだそうです。韓国のロミジュリ的作品、李氏朝鮮時代の説話を書いた『春香伝』の最初のシーンで、主人公の春香がブランコを漕いでいたところ、端午の節句でお出かけした夢龍と出会うという場面が、まさに韓国の端午の節句ですね。

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興味の出た人は、CLAMPの『新春香伝』(白水社、2002年)を読んでみましょう。

日本でも端午の節句には菖蒲湯に入ったり、柏餅を食べたりしますよね。ただ、この日が子どもの日になったのは、菖蒲(しょうぶ)尚武(しょうぶ)の音をかけてだそうで、そこから勇ましい飾りをして男の子の誕生と成長を祝う意味も加わっていったようです。それがすすんで子どもの日になったんですね。ちなみに、韓国も5月5日は子どもの日だそうですが、その日は子どもたちがプレゼントをもらえるという素敵な日だそうです!いいなあ〜。

東北チベットのアムド地域でも端午の節句をお祝いします。家の門に柳や木の枝を挿し、ジャマルという花を飾ります。ジャマルはちょうどこの時期、草原いっぱいに咲き乱れるそうです。

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こちらがジャマル。夏の写真なので、残念ながら花は咲き終わっています。

らマリチャ

この日飾る花は本来何でもいいそうですがこの写真で咲いているラマリチャという花だけは飾らないそうです。なぜかというと、お釈迦さまが亡くなられたときにこの花だけが咲いたので、縁起が悪いんだとか。

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そしてちまきではなくて、ニラ入りのツォマ(蒸し餃子)を食べます。元々チベットでは米はほとんど食べらず、麦が主食でした。なのでちまきの代わりにツォマを食べるんでしょうね(ニラと菖蒲の葉っぱは似てる気がするけど、これは関係ないかな?)。国や地域が変われば、端午の節句も変わるもんですね〜。

以上、各国の端午の節句事情でした。皆さんはどこのスタイルで、端午の節句を祝いましたか?(6月10日:渡邊温子)

日本におけるチベット学の父

今回は日本におけるチベット研究に大いに貢献された、大谷大学名誉教授のツルティム・ケサン先生について紹介します。

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大谷大学はチベット研究に関して歴史と確かな研究実績があります。中国本土にいるチベットの人たちと話していると、日本の東大や京大は知らないけど、大谷大学は知っているという人に会って驚くことがあります。現在大谷大学に中国の青海民族大学から3人のチベット族の留学生が来ているというのもありますが、その功績はツルティム・ケサン先生によるところが大きいです。

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ツルティム先生は1942年に西チベットのシェーカルにお生まれになりました。インドのサンスクリット大学大学院修士過程を終了後、1974年に国際仏教協会の招聘により初めて来日されました。その後1984年には日本に帰化されて、日本名を白館戒雲(しらたて かいうん)とされました。(小ネタですが、帰化したチベット人として、『女性自身』で先生の特集が組まれたこともあります!)大谷大学では仏教学科で、チベット語や仏教の授業を担当されていましたが、国際文化学科の大学院も担当しておられました(各いう私もゼミ生の一人です)。2008年に大谷大学を退職され、名誉教授となられましたが、現在でも現役の研究者として、主に中国国内のチベット族を中心とした学生、研究者、僧侶を対象として講義をおこなわれています。昨年度はツルティム先生の全集が、中国四川省にある西南民族大学から出版され、先方からブンキャプ先生が来学されて、交流がおこなわれました。(記事はこちら

退職後もがつくほどご多忙なツルティム先生は、今年の春も、北京にある中国蔵学中心に招かれて、つい先日まで多くの人々に仏教の講義を行って来られまし。

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チベットの人たちは、偉いお坊さんたちに対して、カターと呼ばれる白いスカーフを捧げます。ツルティム先生はお坊さんではありませんが、生徒さんたちからお願いされて、一人一人からカターを受け取り、彼らの首にかけ返されたそうです。

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生涯現役という言葉がまさにぴったりのツルティム先生。これからも日本や中国を元気に飛び回っていただきたいです!(5月31日:渡邊温子)